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今月の分子


この記事はRCSB PDBPDB-101で提供されている「Molecule of the Month」の2020年4月の記事を日本語に訳したものです。転載・引用については利用規約をご覧下さい。

244: 光合成超複合体(Photosynthetic Supercomplexes)

著者: David S. Goodsell 翻訳: 工藤 高裕(PDBj)

エンドウマメ由来の光化学系II超複合体。光化学系は緑で、LHCIIは黄で、集光性複合体の小さい方の部位は青で示す。たくさんある補因子は濃い緑と赤で示す。
エンドウマメ由来の光化学系II超複合体。光化学系は緑で、LHCIIは黄で、集光性複合体の小さい方の部位は青で示す。たくさんある補因子は濃い緑と赤で示す。

最近、実験手法が発展したことにより、光合成(photosynthesis)で光を捕らえる詳細なしくみについて分かってきた。葉緑体(chloroplast)の膜を電子顕微鏡で観察することにより、光化学系(photosystem)が巨大な超複合体の中心にあって、その周囲を集光系(antenna system)が密着して並びとり囲んでいることが明らかになった。現在、この超複合体を生きた細胞から引き離すときに壊れてしまわないよう、新たなより穏やかな方法の開発が進められている。そして、単粒子クライオ電子顕微鏡による新たな手法を使って精製した大量の超複合体のコピーを観察し、その画像を統合して詳細な構造を決められるようになっている。

超複合体

光合成超複合体(photosynthetic supercomplex)は光合成のエネルギー変換に関する大仕事をしている光化学系(photosystem)からできていて、光を集め光化学系にエネルギーを注ぎ込む集光性複合体(antenna complex)がこれを取り囲んでいる。集光性複合体II(Light-harvesting complex II, LHCII)は植物や緑藻における主要な集光性複合体で、これはクロロフィル(chlorophyll)やカロテノイド(carotenoid)のように光を吸収する補因子で満たされた三角型のタンパク質集合体となっている。いくつかのより小さな集光性複合体がLHCIIを光化学系に結びつけるのに役立っている。ここに示す超複合体(PDBエントリー5xnl)はエンドウマメ由来の光化学系II(PSII)である。

アンテナの調節

藻類から得られた光化学系II超複合体の弱光型(左)と強光型(右)。
藻類から得られた光化学系II超複合体の弱光型(左)と強光型(右)。

植物と藻類は使える光を最も効率的に活用するため、常に超複合体を調整し続けている。例えば、光化学系II(PSII)は赤い光を最も効率良く使えるが、光化学系I(PSI)にとって最も効率が良いのはより赤外光寄りの光である。また植物は、受ける光が多すぎるときに光化学系を保護する必要がある。植物や藻類の細胞は利用可能な光の量と種類に応じて集光性複合体の配置を動的に変化させる。ここに示す二つの構造(PDBエントリー6kac6kad)は緑藻に由来する光化学系がとる2種類の型を示している。一方は光が弱くて多くの集光性複合体がある状態、もう一方は光が強くて集光性複合体の数がより少ない状態である。

光化学系I超複合体

光化学系I超複合体。上がエンドウマメ由来、下がシアノバクテリア由来。
光化学系I超複合体。上がエンドウマメ由来、下がシアノバクテリア由来。

光化学系I(PSI)は通常、2種類の集光性複合体を使って超複合体をつくる。PDBエントリー5zjiはトウモロコシから得られた超複合体の構造で、4つの集光性複合体I(LHCI)分子が光化学系の一側面に並んでいる。もし光の条件が光化学系Iにとって適したものなら、ここに示すようにLHCIIも超複合体に結合する。他の光合成生物を見ると、この点についてさまざまなタイプがあることが分かる。最も大きな超複合体の一つは最古の光合成生物であるシアノバクテリアに見られる。鉄分が不足するなどストレスがある条件下に置くと、シアノバクテリアのPSI(PDBエントリー6nwa)は集光性複合体による一重または二重のリングで囲まれた光化学系3量体と巨大な超複合体をつくる。

構造をみる

光化学系II超複合体

表示方式: 静止画像

対話的操作のできるページに切り替えるには図の下のボタンをクリックしてください。読み込みが始まらない時は図をクリックしてみてください。

集光性複合体は光を吸収する補因子をたくさん抱えていて、それらをすべて一緒にまとめておくタンパク質は必要最低限しかない。この図(PDBエントリー5xnl)では、分子の中に並んでいるすべての補因子を見やすいようタンパク質は主鎖だけを表示している。クロロフィルは濃い緑で、ルテイン(lutein)やβ-カロテン(beta-carotene)のようなその他の有色補因子はピンクで示す。この構造をより詳しく見るため、図の下のボタンをクリックして対話的操作のできる画像に切り替えてみて欲しい。

理解を深めるためのトピックス

  1. PDBjの各PDBエントリーページで「構造情報」タブの「エンティティ」パネルを見ると、種類が「non-polymer」となっているエンティティの中にこれらの複合体に含まれる様々な補因子が表示されています。RCSB-PDBの各PDBエントリーページでは「Small Molecules」の項目にこれらの補因子が表示されています。
  2. これらの構造をPDBjのEM Navigatorで見てみてください。PDBエントリーページへもリンクされています。

参考文献

  1. 6kac6kad Sheng, X., Watanabe, A., Li, A., Kim, E., Song, C., Murata, K., Song, D., Minagawa, J., Liu, Z. 2019 Structural insight into light harvesting for photosystem II in green algae. Nat.Plants 5 1320-1330
  2. 6nwa Toporik, H., Li, J., Williams, D., Chiu, P.L., Mazor, Y. 2019 The structure of the stress-induced photosystem I-IsiA antenna supercomplex. Nat.Struct.Mol.Biol. 26 443-449
  3. 5zji Pan, X., Ma, J., Su, X., Cao, P., Chang, W., Liu, Z., Zhang, X., Li, M. 2018 Structure of the maize photosystem I supercomplex with light-harvesting complexes I and II. Science 360 1109-1113
  4. 5xnl Su, X., Ma, J., Wei, X., Cao, P., Zhu, D., Chang, W., Liu, Z., Zhang, X., Li, M. 2017 Structure and assembly mechanism of plant C2S2M2-type PSII-LHCII supercomplex. Science 357 815-820
  5. Dudkina, N.V., Folea, I.M., Boekema, E.J. 2015 Towards a structural and functional characterization of photosynthetic and mitochondrial supercomplexes. Micron 72 39-51