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今月の分子


この記事はRCSB PDBPDB-101で提供されている「Molecule of the Month」の2006年9月の記事を日本語に訳したものです。転載・引用については利用規約をご覧下さい。

81: 伸長因子(Elongation Factors)

著者: David S. Goodsell 翻訳: 工藤 高裕(PDBj)

伸長因子EF-Tu(青)と運搬RNA(赤)の複合体(PDB:1ttt)

一見したところ、細胞は主要なタンパク質合成工場であると、私たちは思うかもしれない。典型的な細菌細胞の場合、分子機械の半分以上は新しいタンパク質を作るのに専念している。これには、タンパク質の合成を指示するDNAやメッセンジャーRNA、この情報をタンパク質に翻訳する運搬RNA、そして主なタンパク質構築作業を行うリボソームが含まれる。タンパク質合成には各段階を協調させるためのタンパク質因子も次々に必要となる。これには全てを開始させる開始因子(initiation factor)、各鎖を終端させる終結因子(release factor)、そして開始と終結の間で多くの段階を助けている伸長因子(elongation factor、EF)が含まれる。

すばらしい3者の組み合わせ

あらゆる生物は3つの型の伸長因子を作るが、それらの形は多少なりとも似ている。この3つはそれぞれEF-Tu、EF-Ts、EF-Gと呼ばれる。ところが、多くの生物学者の間で、別の名前も使われている。このような別名は長年研究されてきた中で作られたものである。EF-1A、EF-1B、EF-2と呼ばれる3因子が、真核生物の場合前に"e"をつけてeEF-1Aのように呼ばれるのを目にするだろう。またギリシャ文字が付加される場合もある。だから、これらの分子を自分で探索する時、その名前が変わっても驚かないで欲しい。

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右図に示したPDBエントリー 1tttのEE-Tuは、GTP分子の助けを借りて、運搬RNAをリボソームへと導く重要な仕事を行う。EF-Tuは細菌細胞で最も豊富に見られるタンパク質で、通常この量は各運搬RNAに1つずつ割り当てるには十分な量である。EF-Tuは適切なアミノ酸が付加された後の運搬RNAに結合する。そしてEF-Tuと運搬RNAの複合体はリボソームの活性部位に入る。運搬RNAのアンチコドンがメッセンジャーRNAのコドンと正確に一致した時、リボソームからの信号によってEF-Tuの形が変化し、GTP分子が切断される。これによってEF-Tuは運搬RNAと離れて去っていき、運搬RNAはタンパク質合成反応に入ることができるようになる。

リサイクルに良い

伸長因子EF-Tu(上、青)とEF-Ts(下、緑)(PDB:1efu)

一旦EF-Tuが仕事を終えると、消費されてできたGDPはEF-Tuの活性部位をほじくり出し、新たなGTPが結合できるようにしなければならない。EF-Tsがその仕事を行う。EF-TsはGDP結合型のEF-Tuに結合して形をゆがませ、GDPとそれに付随するマグネシウムイオンの結合を不安定化させる。右に示した構造は、細菌から得られたPDBエントリー 1efuの構造で、下には緑色でEF-Tsが、上には青色でEF-Tuが示されている。

ペプチド合成の進行

左:伸長因子EF-G(PDB:1dar) 右:伸長因子EG-Tuと運搬RNAの複合体(PDB:1ttt)

リボソームがアミノ酸を合成中ペプチド鎖に付加した後は、運搬RNA分子の位置をずらして使用済みのものを排出し、次の運搬RNAが結合する場所をつくる必要がある。その仕事はEF-Gが行う。右図左に示した細菌由来のEF-G(PDBエントリー 1dar)の構造を見ると、右図右に示したEF-Tuと運搬RNAの複合体の形と非常に似ていることが分かるだろう。EF-GはGTPの力を使って、リボソームと結合し、運搬RNAを排出し、メッセンジャーRNAを1コドン分ずらす。後に示すように、この反応は大きな形状変化に関わっているかもしれない。

構造をみる

左上:GTPが結合した伸長因子EF-Tu(PDB:1etf) 右上:GDPが結合した伸長因子EF-Tu(PDB:1tui) 左下:ソルダリンが結合した酵母のEF-2(PDB:1n0u) 右下:ソルダリンが結合していない酵母のEF-2(PDB:1n0v)

GTPやATPを使うタンパク質によく見られるように、伸長因子はその仕事をしている間大きく形を変える。GTPに似た分子が結合したPDBエントリー 1eftの構造と、GDPが結合したPDBエントリー 1tuiの構造とを比較すると、GTPのエネルギーを使った動きが分かるだろう。EF-2(酵母由来のEF-G)も同じように形が変化するが、それはPDBエントリー 1n0uとPDBエントリー 1n0vの比較で見ることができる。前者はソルダリン(sordarin、抗菌薬)が結合したもの、もう一方は結合していないものである。下にある大きなドメインの方向がどのように回転しているかに注目して欲しい。なお、リボソームの機能を電子顕微鏡でも研究したところ、同様の形状変化が観察されている。

2006/09/01 にキーワード「elongation factors」でPDBエントリー を検索して作成した関連エントリー一覧は[[mom:81_rel|こちら]]。

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