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今月の分子


この記事はRCSB PDBPDB-101で提供されている「Molecule of the Month」の2005年5月の記事を日本語に訳したものです。転載・引用については利用規約をご覧下さい。

65: 自己スプライシングRNA(Self-splicing RNA)

著者: David S. Goodsell 翻訳: 工藤 高裕(PDBj)
運搬RNA前駆体(PDB:1u6b)

自然は驚くべきことで満ちており、何かを理解しようとすると自然は例外に出くわすことを確信できるだろう。20年前、これは酵素の場合にあったことである。生化学者たちは、何十年もの研究の末、タンパク質は細胞内で化学反応を触媒する唯一の分子であると考えていた。そのため、全てのタンパク質を取り除いても起こる天然のRNAスプライシング反応(RNAを切ってつなぎ合わせる反応、RNA splicing reaction)がトーマス・チェック(Thomas Cech)と彼の共同研究者たちによって発見された時、それは驚きであった。それ以来、化学的な仕事を行うRNA分子であるリボザイム(ribozyme)の更なる事例が数多く発見されてきた。

イントロンの切除

動植物におけるほとんどのRNA分子は、最初余分な部分を含んだ長い前駆体として作られ、これを最終的に活性のある分子にするにはその余分な部分を取り除いて再構築する必要がある。この前駆体RNA分子は重要な部分であるエクソン(exon)とそれを分割していて取り除く必要があるイントロン(intron)とで構成されている。多くの場合、RNAはタンパク質とRNAで構成される分子機構「スプライソソーム」(spliceosome)によって切断され接合(スプライシング)が行われる。ところがある場合には、RNAは自分自身でスプライシング反応を行うことができる。最初の事例はトーマス・チェックによって発見された原生動物(protozoan)のリボソームRNA(ribosomal RNA)であった。それから何百もの事例が哺乳動物(many organism)のゲノム配列で見つかった。ここに示したのはPDBエントリー 1u6b から得られた、機能型になる前にイントロンの切り出しが必要な細菌の運搬RNA(transfer RNA)の一部である。図中に緑色で示した長い構造はイントロンで、GTPと2つのマグネシウムイオンを使って自分自身を取り除く。切り出される2つのエクソンは赤と青で示している。どちらのエクソンも構造中の小さな断片に過ぎないことに注目して欲しい。

どこにでもあるリボザイム

リボザイムは一旦発見され始めると至る所で見つかるようになった。ある場合には、RNA分子として作られ自分自身に作用する自己スプライシングイントロンとして働く。また別の場合には、他のRNA分子に作用しリン酸結合を分解して再結合し鎖をつなげる。スプライソソームやリボヌクレアーゼP(ribonuclease P、運搬RNAおよびその他のRNA分子を切断する)といったリボザイムの場合は、RNAがタンパク質と一緒になって反応を行う。ほとんどのリボザイムはRNAに対して切断や接合の反応を行うが、リボソーム(ribosome、これもリボザイムの一つと考えられている)はRNAがタンパク質のペプチド結合形成といった他の反応もできることを示している。

最も単純なリボザイム

ハンマーヘッド型リボザイム(PDB:1mme)

ハンマーヘッド型リボザイム(hammerhead ribozyme、ヌクレオチド配列図がハンマーのような形をしていることからこう呼ばれる)は今までに発見された中で最も小さい天然のリボザイムである。ここに示した事例はPDBエントリー 1mme のものである。このリボザイムが行う反応は非常に単純で、ヒドロキシル基(hydroxyl group、赤)が隣接するリン酸(橙、ピンク)に攻撃してRNA鎖を切断する。周囲にある独特な環状構造がこの結合部分を丁度正しい位置でつかみ切断を促す。この種の「核酸分解」(nucleolytic)リボザイムは、環状DNAを持つ生物が出くわす特有の問題を解決するのに用いられる。RNAポリメラーゼは環状DNAからRNAを作る時、周り続けて次々と複製し長い連続した鎖を作ってしまう。これをRNAに組み込まれたリボザイム自己切断部位が切断して、より小さな機能する断片にする。

構造をみる

運搬RNA前駆体(PDB:1u6b)のスプライシング反応の様子

PDBエントリー 1u6b の自己スプライシングRNAはスプライシング反応を行っている途中の様子を捕らえている。この図では、2つのエクソンは赤と青で、イントロン部分は緑で示している。イントロンの残りの部分(当ページ最初の節では全て表示していた)はここでは省略している。反応は1つの連続したRNA断片から始まる。赤色で示したエクソンO3'末端が上側の丸で示すリン酸基に付加されたところ(切断前)を想像して欲しい。その状態で鎖をたどれば、赤のエクソンから緑のイントロンを通って青のエクソンに至る。ここに示した構造は最初の切断が行われた後の分子である。GTPがイントロンと赤のエクソンとの間で鎖を切断し、イントロンの一方の端にくっついて残っている。この状態は、赤のエクソンのO3'酸素原子が青のエクソンの末端(下側の丸で示した部分)にあるリン酸を攻撃するのにぴったりの位置関係である。そして攻撃により結合が形成されると、緑のイントロンは解放され、赤と青のエクソンはつなぎ合わされる。ここに示したイントロンの短い部分は「ガイド配列」(guide sequence)と呼ばれ、2つのエクソンがすぐ隣同士に並ぶよう仕向けていることに注目して欲しい。

この構造を自分で見る際、鎖への色付けのは少し時間をかけて欲しい。なぜなら全体構造はややこしいかもしれないので。 赤で示したエクソンはD鎖、青のエクソンはC鎖の1〜6番残基である。 A鎖は結晶化を助けるために用いられたタンパク質で、残り全て(B鎖およびC鎖の残り)がイントロンである。

2005/4/27にPDBでFASTA検索を行って決定した自己スプライシングRNAに関連するエントリー一覧を[[mom:065_rel|こちら]]に掲載しています。

更に知りたい方へ

以下の参考文献もご参照ください。